女子高生、ちょっとがんばる(テスト投稿)
誰もいない教室。
放課後になって、みんな帰っちゃったり、部活行って、ちょっと遅い時間だから廊下とか校庭はざわざわしてるけど、教室の中は静か。
どきどきしながら、中途半端な長さのスカートをたくしあげる。
ほんとはもっと短くしたいけど、何か派手目な子に笑われそうで、切るのもベルトのとこでまくるのもできない。
自意識過剰なんろうけど。
うしろを振り返って、教室の前とうしろのドア、どっちもちゃんと閉まってるのを確認する。もう十回くらいたしかめてる。
反対側の、窓の方はカーテンも全部開いてるけど、二年生の教室は三階だし、まわりに高い建物とかないし、誰からも見えない。……はず。
どきどき。
スカートの下に手を入れて、下着に手をかける。
お母さんにからかわれるのが嫌で、ユニクロとか、つまんないとこで買った花柄のショーツ。
サイズ合ってなくてちょっとゆるい。MだとゆるいのにSだときつくて中途半端。
両手の親指をゴムにかけて、ひっぱって、おろす。
ああ、心臓がはじけそう。どきどきする。指がふるえてる。ばかみたい、って思うのにふるえるのが止められない。
上履きを両方脱ぐ。ぽいぽいって脱ぎ捨てる。
そのままショーツをお尻から下ろして、右脚を持ち上げて、片方抜く。
ちょっとよろめいた。はは。緊張しすぎ。緊張して、胸とか喉とか、なんでか眼鏡の奥の両目とか痛いのに――そのどきどきが、怖くて、痛くて、きもちいい。
反対側の脚も抜く。
まるめたハンカチみたいなちっちゃい布が、右手に残る。くしゃっと丸める。誰かきても、ハンカチだって思ってもらえる。きっと。
これでもう、あたし、何もはいてない。スカートの下、すーすーする。
……へへ。
変態かな。いつもみんなが勉強してる教室で、……あの子がまいにち通ってる教室で、パンツ、脱いじゃった。
またちょっとよろっとしながら、近くの椅子をひっぱる。
あの子の席。あの子の椅子。
そっと座る。
スカートごしに、プラスチックの椅子の感触が、なんかすごい、なまなましく感じる。
変だよね。薄い布一枚、いつもより少ないだけで。
……あ、やだ。
脚の間、汗……? じゃない、でも何か、しめった、あったかいのが、うっすらと滲んできてる。いつもひとりで、部屋のベッドで、パジャマの上からこっそり指でそこ、擦った時みたいな。
今は、触ってもないのに。
制服、汚れちゃう……。
そう思って少しお尻をずらそうとしたら、下着よりも荒い感じのスカートの布が、湿ったとこに、こすれた。
「……ぁっ……!」
びくんと、腰が動く。嘘。こんなことくらいで。
でも……。
「……ん……ぁん……」
お尻を揺らすみたいに、椅子に押しつけると、すごく……気持ちよくて。
止まんない。
やだ。こんなとこあの子に見られたら、しんじゃう。恥ずかしくて、泣きながら、しんじゃう。
そう思ってたら。
「おい、誰かいるのか!」
「ひゃっ」
突然教室の前のドアが開いて、飛び上がるみたいに驚いた。
「何だ。もう下校の時間だぞ、部活もやってないんだから、早く帰りなさい」
あたしは一生懸命なんでもないふうに振り返った。教室を覗き込んでるのは、担任の先生だ。
がっかりしたのと、ほっとしたのと、何やってるのかばれそうでおっかないのと。右手に握ったままのショーツを、さらにぎゅっと握って隠す。今度は背中とかに冷や汗かきそう。脱ぎっぱなしの上履き、みつかりませんように。
「や……やだ、先生、こないだから文芸部、入ったんですよぉ……」
「うん、そうだったか? なら早く部室に行きなさい、もう少しで鍵が閉まるぞ」
「はぁい……」
先生は、すぐにいなくなった。
あたしはもう心臓ばくばくしながら、どうしてこんなにどきどきして、また……スカートの中、湿っちゃったのかなって考える。
あの子にみつかったら困るけど。
先生にみつかって、叱られたら、とか考えると、すごく怖くて、ぞくぞくする。
他の先生にばれるかな。クラスの子にもばれるかな。誰にも言わないでって、お願いしたら、どうだろう。何でもしますから。お願い先生、黙ってて。あの子にだけは、黙ってて。言わないでくれたら、あたしは、どうなったっていいから……。
「……ふう」
そこまで考えて、あたしはおおきくためいきをつくと、椅子の上で身を屈めた。ショーツをはき直す。椅子から立ち上がって、上履きもちゃんとはき直す。
立ち上がって、ついてもない埃を払うみたいにスカートをはたく。髪を直して、めがねを直して……ああ、いつもの、つまんない、地味なあたしに戻ってしまった。
次はもうちょっと、もっとどきどきする冒険、しよう。
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